小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

パンドラの鍵

INDEX|83ページ/119ページ|

次のページ前のページ
 

本当のことを言うわけにもいかず、貴之は黙り込むしかなかった。

「答えられないことなの」

「そういうわけじゃないんですけど」

「彼、まだ大学で教えているのよね」

「あ、はい。でも……」

「でも……? 彼は元気なの?」

雨はますます激しくなっているようだった。窓ガラスを叩く音が、
貴之の耳にまで響いてくる――。

「行方不明なんです」

「えっ」

彼女の顔がサッと青ざめる。

「行方不明ってどういうこと?」

「それがもう二週間程前から、姿が消えてしまって。講義も途中で
投げ出したままで」

「二週間も前から、連絡もつかないの?」

「はい。だからこうして家を探しに……」

「そうだったの」

そう呟いた彼女の声は、憔悴しきっていた。

「どうして今頃になって……」

貴之はポケットの中から例の写真を取り出すと、彼女に見せた。
作品名:パンドラの鍵 作家名:まゆ