パンドラの鍵
写真の中の彼女は幸せそうに笑っていた。
なぜなんだろう…。
一見、見た感じは普通の何処にでもいるおばさんなのに、彼女には
不思議に人を引きつける何かがあった。
そのことも八年前のことが原因なんだろうか。
過去が彼女をそういう風にしたのだろうか…。
目の前で、涼しげな氷の音が響いた……。
「本当に麦茶でよかった? ジュースでも買ってあればよかったの
だけど」
「いいえ、これで十分です」
「そう、それならよかったわ」
貴之は麦茶を手に取ると、一気に飲み干した。
冷たい麦茶がからからに乾いたのどを潤してくれる。
「おかわりいる?」
「あ、いえ」
頭を振ると、水滴が前髪からしたたり落ちてきた。
「タオルいるわね」
「すいません」
「いいえ、いいのよ」
そう言うと彼女は、引き出しの中からタオルを引っぱり出してきた。