パンドラの鍵
「私の家にいらっしゃい」
「家に?」
「知りたいんでしょ。有馬の家で何が起こったのか」
「はい」
「ここで話すには長すぎるわ。私の家で……、いいかしら?」
貴之は、即座に頷いた。
「こっちよ」
彼女は有馬教授の家があった方向とは逆の道を指すと貴之を案内し
始めた。
この女の人は、貴之があの家の前で感じた不快なものの正体を明ら
かにしてくれるかもしれない……。
八年前、あの家で何が起こったというのか。
恐ろしいこと、恐ろしいこととは一体?
―――八年前といえば俺はまだ小学生だった。
あの頃の記憶に残っている大事件、夜も眠れなくなるようなそんな
事件は、あっただろうか……。
「この町へ来たのは初めて?」
「はい」
「なんだかぞっとしなかったかしら?」
「ぞっとですか?」
「そう…」