小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

パンドラの鍵

INDEX|7ページ/119ページ|

次のページ前のページ
 

「まったく何様のつもりだと思っているんだ。このまだ社会にも出
ていない未熟者が…。恭子、貴之を部屋から出すんじゃない!」

「………」

「俺は、もう寝る」

親父が、そう吐き捨てるように言って部屋を出て行くの分かる。

ドアが壊れそうなほど激しく叩きつけられる音。そして、その後の
妙な静寂。

母は近づいてくると、貴之の肩に手を置いた。

「貴之、あなた自分のしたこと、もう一度よく考えなさい。もうお
母さん達を哀しませないで。分かったわね」

貴之は動かなかった。うつろな目をしてじっと床の木目模様を見つ
めていた。

決められた人生。俺は、ただ都合のいい人形。俺は、俺は……。

大学に行きさえすれば、やりたいことが出来ると思った。

しかし所詮は籠の中の鳥。

親父の会社を継ぐための、決められたレールに突き進んでいただけ。

そう気が付いたのはいつだったか。

目の前が真っ暗になった。

着々と進んできた道は、単に親のエゴと見栄に形作られた虚像の産
物だったと知ったときは……。
作品名:パンドラの鍵 作家名:まゆ