パンドラの鍵
貴之はまるで感想でも述べるような感じで、淡々と述べた。
「俺も…」
と、友也が答える。
「有馬のやつ、もしかしてあれに喰われたのかもしれねぇな」
「………」
貴之は、あの謎の生物に有馬教授が襲われている場面を思い浮かべ
てみたが、今一つしっくりとこない気がして、慌ててその考えを頭
から振り払った。
実際、貴之自身とても不思議な気持ちだったのだ。
息苦しさの中で感じた、奇妙に懐かしく、愛しい気持ち。
最初感じた恐怖心と恐れは、時間が経つにつれて徐々に薄れていっ
た。
だからと言って、もう一度あんな目に遭いたいわけではない。
ただ自分の中に起こった、不可解な感情の変化に貴之は戸惑ってい
た。
しかしと、貴之は自分の隣でぐったりと倒れ込んでいる友也の姿を
見て思う。
友也が助けてくれなかったら、今ごろ自分はどうなっていたのだろ
うと……。
そのことを考えると、恐怖で頭がおかしくなってしまいそうだった。
「それにしても、なんだったんだろうな」
友也が話しかけてくる。