パンドラの鍵
青々と茂った芝生の上、二人は荒い息を吐きながらそこまで走って
来ると、力尽きたようにバタッと仰向けに寝転がった。
目の前に平和そのものといった感じの雲一つない青空が広がってい
る。
二人はしばらく黙って空を見上げていた。風が気持ちいい。
世界は平和だ。小鳥のさえずり、青々と茂った樹木。
しかし、平和だと信じていた世界は、ほんの些細なきっかけで見事
なまでに崩れ去った。
刻々と姿を変える世界。
貴之は次元の違う世界に迷い込んでしまったのかもしれない。
株式会社リアル。
謎の組織……。
あの日、偶然アクセスしてしまったのが始まりだったのか。
それともこうなるのは、全て計算されての事だったのか。
それはわからない。
しかし現実に、この世界には映画やテレビでしか存在しないはずの
得体の知れない生物が存在している……。
背中をぞくぞくと虫酸が走った。
だが、不思議と今この瞬間は、映画を一本見終わったような、そん
な感覚に包まれていた。
友也も同じ感覚なのだろう、二人は透き通る空を見上げながら徐々
に冷静さを戻していった。
「死ぬかと思った……」