パンドラの鍵
「カッターか」
友也はそう呟き、無造作に引き出しを開け中を覗き込んだ。
「息が、息ができ……」
振り向くと、信じられないような光景が友也の視界に飛び込んでき
た。
髪の毛の様相をしていた物体は、もはやとてつもない大きさに膨ら
み、それ自体が一つの生命体を形作っているように生々しかった。
貴之の体は、その得体の知れないグロテスクな生き物に埋め尽くさ
れ………。
「工藤!」
焦れば焦るほど、カッターは見つからない。
友也の手の平は、ぐっしょりと汗ばんでいた。
「どこだ、どこにある?」
「二、二番目の…」
「二番目の引き出しか」
貴之が最後の力を振り絞って頭を振る。
友也はやっとのことで、引き出しの奥底で眠っていたカッターを発
見すると、急いで握りしめ、がむしゃらに刃を髪にあてがった。
しかし、予想以上にそれは堅くなかなか切れなかった。
「なんだよ、なんだよこれっ」
「お願いだ、どうにかしてくれ……」
「あぁ、分かってる。大丈夫だ、大丈夫だから」