パンドラの鍵
「この音…、いったい」
貴之が友也の顔に視線を向ける。
その途端、貴之の視界の中で、友也の表情が恐怖に凍りついた。
「あぶねぇ!」
友也の叫び声がほとばしったのと、肩を押されたのはほぼ同時だっ
た。
床に転がりながら貴之は、自分の手首に絡みついている緑の髪に目
を見開いた。
口から言葉ではない声がこぼれる。
髪の毛は速度を増して貴之に絡みついてきた。
信じられないほどの力……。
貴之は手首がもげそうな痛みに襲われ、思わず呻き声をあげた。
「成瀬! 助けて! 髪が、髪が……」
「わ、分ってる、分ってるから…」
友也は机の上をおぼつかない手つきでまさぐると、何か役に立つも
のはないかと目を凝らした――。
しかし、それらしき物はなかなか見あたらない。
「引き出し! 引き出しに――」
「引き出し……」
貴之は必死の形相で頷くと、
「確か、カッターがあるはず…」