パンドラの鍵
「すごいだろ…」
「あ、あぁ」
「さらに、それだけじゃないんだ。こいつが……」
「まだなにか起こるのか?」
友也の言ったことに嘘はなかった。
突然光の中にさらされたそれらは、急速に黒から緑へと色を変える
と、ニュルニュルと本の狭間で蠢き始めた。
その動きはまるで軟体動物のようになめらかで、貴之の目を釘付け
にした。
「なんだ!」
思わず口から言葉が飛びだしている。
横から友也が覗き込んでくる。
「気味悪いだろ」
「あ、あぁ」
「なんだと思う?」
「なにかって……」
「俺、生まれて初めて見た、こんなもの」
「そりゃそうだろ、俺だって」
本の中でのたうち回っている髪の毛は、その色をますます濃く染め、
キーキーと奇声を発し始めた。
「おいっ」
「あぁ、どうしたんだ?」