小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

パンドラの鍵

INDEX|52ページ/119ページ|

次のページ前のページ
 

空気はどんよりと濁り、雑然と積み重ねられている書物には、うっ
すらと埃が積もっていた。

ブラインドの隙間から僅かに差し込む太陽の日差しが、室内をほの
かに照らし出していた。

「何をするんだ、この部屋で」

仕方がないといった感じで部屋に入ってきた友也は、薄汚い室内を
ぐるりと見まわして言った。

「そうだなぁ―」

貴之は曖昧に返事を濁すと、部屋の片隅に置かれた机に視線を止め
た。

机の上には飲みかけのコーヒーに、無造作に置かれた書物の山――。コーヒーはすっかり冷めきっていて。表面には埃の膜が張っていた。そして、受話器が外れたままの電話。

この状況は……?

時の経過を唯一象徴する埃を取り除けば、有馬教授がついさっきま
でここにいたと言っても、何一つとして不思議ではない状態。

まるで突然の電話に、慌てて部屋を飛び出していったよう…。

そしてそれ以来、教授はこの部屋に戻ってきてはいない。

それだけは紛れもない事実。   

貴之は受話器を手にすると、何も聞こえないと知りつつ、耳に当て
ずにはいられなかった。

しかし、やっぱり聞こえてくるのは連続的な機械音だけ……。

電話の相手は一体誰なんだ?

教授は誰かに呼び出されて部屋を飛び出していった。

大学の講義を途中で投げ出してまで。

常識のある大人の男が取った行動にしては、あまりにも非常識すぎ
る――。貴之は、頭を抱えた。
作品名:パンドラの鍵 作家名:まゆ