パンドラの鍵
「あそこなんだけどな……」
友也が指し示した場所は、実験室の隣に設けられたある一角だった。その前の廊下だけが妙に薄暗く、剥き出しの蛍光灯がチカチカと点滅し、青白い光を投げかけていた。
「やっぱりいないみたいだな。電気もついていないし」
「そっか」
「どうするんだ…」
友也はドアの隙間から中を覗き込みながら訊いた。
「中へ入るしかないだろ」
「この部屋の中に…、そいつはまずいって。第一鍵が……」
「壊す」
「正気か、おまえ?」
「あぁ。それにもしかしたら鍵は掛かっていないかもしれない」
「どうしてそんなことが分かる?」
「感だよ、俺の感」
人気のない教官室。貴之はそろそろとドアノブに手を伸ばした。
「開くと思うか?」
「まさかっ」
友也は顔をひそめた。
「俺は開くと思う」
貴之はそう言うと、ドアノブを回した。
ガチャリ、ドアの開く音が廊下に響きわたった。