パンドラの鍵
周囲の大学生達は、他愛のない話をしながら無邪気にふざけあって
いる。
「そういえば最近、俺、有馬の授業受けた記憶ねぇわ。確か、休講
が二、三回続いていたような気がする」
「まじで?」
「あぁ。だから、もしかしたらずっと学校に来てないのかもしれな
い」
「学校に来ていない……。理由は?」
「それが曖昧なんだよ。学会の時期でもないだろ。事務の人も困っ
ていたよ、連絡もないってな」
「無断欠勤ってことか?」
「そうなるな」
貴之は目の前の灰皿に視線を落とすと、これからどうすべきか考え
を巡らせた。
「教官室は?」
「有馬のか」
貴之は頷くと、
「知ってるか?」
と続けた。
「知ってるもなにも、レポート提出しに行ったりするから場所ぐら
い知ってるけどさ」