パンドラの鍵
貴之の脳裏に、やせ衰えた雅美の姿が浮かんでは消えた。
「いや、行きます」
「そうですか……、では連れて行きましょう。あの方のもとへ」
そう言うと女は一冊の本を手に取り、所定の場所へその本を移動さ
せた。
するといとも簡単に装飾棚はくるりと半回転し、目の前に地下への
入り口が姿を現した。
「中に階段があります。暗いので足下に気をつけて」
女はそう忠告すると、闇の中に消えた。
貴之も後に続く。
階段は想像以上にぬめぬめと滑りやすく、かなり注意をしなければ
足を踏み外しそうなほどだった。
「どこまで続いて……」
そう言いかけて貴之は、足元に妙な感触を覚えて下を見下ろした。
思わず身体が強張る。
足元には無数の蛇が蠢いていた……。
ここで、転んだら一溜まりもないな。
貴之は蛇に絡みつかれている自分の姿を想像して身震いした。
長い階段をやっとの思いで下ると、そこは………。