パンドラの鍵
男は、一週間前と同じ様相で目の前に立っていた。
「契約書、むやみに引き裂かないで下さいね」
そして、にやりと唇を歪めた。
「実は………」
「無駄ですよ。契約は交わされた。今更白紙に戻すことなど出来な
い。お客様も分っていたはずです」
「そんなっ」
「まぁ、御両親を取り戻せないこともないですけどね。それもあな
たの理想とする……」
貴之の目が見開く。
「知りたいですか?」
貴之は何度も頭を上下に振り続けた。
「ここを訪ねなさい。きっとチャンスを掴むことが出来るはずです」
「ラビリンス?」
「そうです。それともう一つ、合言葉を教えておきましょう。中に
入るときに必要でしょうから」
「合言葉?」
男が何事か口走る。
「よろしいですね。お忘れなく」
「………」
「では、あなたの幸運を心より願っています」