パンドラの鍵
「工藤さ―ん、郵便物を届けにきました―。誰かいませんか―?」
玄関で、配達夫が声を張り上げている。
貴之は、二階の窓からそっとその様子を黙って見続けていた。
「困ったな……」
配達夫はそう呟くと、溢れかえった郵便受けに持ってきた郵便物を
無理やり押し込むと、バイクに跨って去って行った。
なんだろう?
貴之は妙な胸騒ぎを覚えて、下へと降りていった。
これか……。
A4サイズの茶封筒。
送り主の名はない。
貴之は封を開けた。
そして中身を見て凍りついた。
「お客様、本当に困ります。全く、修正するのに時間が掛かってし
まいましたよ」
馴染みのある声。
貴之はビクッと肩を震わせると、恐る恐る声のした方に視線を合わ
せた。