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パンドラの鍵

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強迫観念にも似た思い込み。

貴之の本当の姿を認めようとはしなかった両親。

圧迫され続け、息苦しくて耐えがたい日常。

そして、複雑に歪み始めた貴之の心は行き場を失って……。

「お兄ちゃん……」

「俺だって、こんな形で復讐したかったわけじゃない。ただ、本当
の俺を認めて理解してほしかっただけなんだ」

貴之は、誰も座っていないダイニングテーブルを見つめながら、自
分自身に言い聞かせるように呟いた。

日曜日の朝、いつもなら香ばしいコーヒーの香りと、こんがりと焼
きあがったトーストの香りが辺りに漂い、親父のめくる新聞の音が
聞こえてくる筈だった。

しかし今朝は、それらの変わりに静けさが辺りに漂っていた。

これでよかったのだろうか?

ふと疑問が、貴之の脳裏を横切る。

俺は正しかったのだろうか?

もしかしたら、もっと話し合えばよかったのかもしれない。

本当は分かり合えたかもしれない。

さっきまでの高揚とした気持ちはすっかりと消え失せ、今や貴之の
心境は後悔でいっぱいだった。
作品名:パンドラの鍵 作家名:まゆ