パンドラの鍵
日はいつのまにかすっかり暮れ、電気も灯していない部屋の中は、
無気味な青白い光を放つパソコン以外に明かりはなく、貴之を取り
囲む空気は異様な雰囲気に包まれていた。
男は一瞬表情を硬くすると、先程とは打って変わった真面目な口調
で語り始めた。
「さぁて、そろそろ本題に入るとしますか。私もそんなに時間がな
いのでね」
「本題……」
「そうです。私の役目はあなたの退屈で平凡な今の生活を一変させ
ること。実際、あなたはそれを望んでいる。違いますか?」
「それは、確かに…」
「そうでしょう。それなら話しは早い。私達の組織はあなたの夢を
叶えることができる。悪い話ではないはずです」
「でも、現実にそんなことが……」
「出来るわけがない…」
男は、貴之の言葉を引き継いだ。
どこからともなく風が吹き、貴之の肌を舐める。
これは、夢……。男の姿が一瞬揺らぐ。嘘か真か?
貴之の口から飛び出した言葉は―――。
「じゃあ、俺の両親を消してくれ」
「お安いご用です」