パンドラの鍵
男は待っていましたとばかりに微笑むと、契約書を取り出した。
「あなた様の御両親、結構です。では、ここへサインを」
「………」
貴之の指先から突如溢れ出す鮮血……。
真っ白な紙の上に押される赤の刻印。
契約は交わされた――。
悪魔との契約。
この先にあるのは、果たして楽園なのか?
それとも………。
男の姿は一枚の契約書を残して跡形もなく、貴之の前から消え去
った。
夢だ、夢に決まっている。自分の願望が生み出した夢……。貴之
の意識は再び暗い奈落の底へと落ちていった。
静まり返った室内で、パソコンが独りでに起動する。
ゲームは開始された……。
もう引き返すことは出来ない。