パンドラの鍵
部屋の気温が一気に下がったような気がした。
全身黒ずくめの男。
その謎の男は椅子から立ち上ると、ゆっくりと頭を下げた。
「あ、あなたは……」
貴之の声が上ずる。
「私ですか? 私はこういうものです」
男はそう言うと、貴之に名刺を差し出した。名刺には株式会社リア
ルと記してある。
「株式会社リアル?」
貴之は、思わずパソコンを覗きこんだ。
“登録完了致しました。お買い上げありがとうございます”
「えっ、俺いつのまに」
机の下に壊れたマウスが落ちている。
これか、貴之は屈んでマウスを拾い上げた。
「工藤貴之様ですね」
貴之は狐に包まれたように、頷いた。
「本日は誠にお買い上げ頂きましてありがとうございます」
「はぁ」