パンドラの鍵
「おばさん、俺が犯人を見つけ出しますよ。そして、胸を張って息
子さんに言ってやってください。犯人はこの人なのよと」
「あなたが……」
「はい…」
「どうして……?」
その質問には答えなかった。その代わりに貴之は、
「じゃあ、失礼します」
と、頭を下げると、玄関に向かった。
外を見ると、まだ雨が降り続いていた。
止みそうな気配は一向になさそうだった。
「傘、どうぞ使って!」
そう言って差し出された傘。
貴之は素直に受け取ると礼を言った。
「後日、返しに来ます」
「いいのよ、気にしてくれなくても……。捨ててもらってもかまわ
ないから」
「いいえ、近々またこっちへ来ますので、ついでに寄りますよ」
「また、こっちへ?」
早苗は眉をひそめた。
「もしかして、あの家へ行く気なんじゃ……」