パンドラの鍵
「あの、今あの家は誰が管理しているんですか?」
「管理……、あぁ、大家さんね」
「はい」
「金子不動産だったと思うけど」
「金子……」
「えぇ、確か目黒の方に会社があるんじゃなかったかしら」
貴之は礼を言うと、ソファーの上から立ち上がった。
とりあえず、あの家の中に入ってみるつもりだった。
実際に中の様子を見てみることによって、何かが分るかもしれない。
「もう帰られる?」
「はい、長居してしまったので……」
「そんなことは……、こちらこそ引き止めてしまって」
「いいえ、俺が無理にお願いして話してもらったんですから……。
本当にありがとうございます」
「礼なんて、私も本当は誰かにずっと話したかったのよ。八年前の
ことをこうやって独りで抱えていくには、あまりにも重すぎてね」
「………」
「よかったわ、話せて、本当に」
淋しげで、疲れ切った表情。