妖怪警察
次の日
僕は、黒さんの言ったとおりいつもどおり学校に登校するけど横に黒さんがいるから気になって仕方がなかった。
「どうした誠? さっきからキョロキョロして……」
「いやさ、慣れないことがあると落ち着かないんだよ」
「俺がいることか?」
「そうだよ、妖怪が朝からいるなんて見たことないもん」
「妖怪が夜に徘徊するっていうのは、人間が勝手に決めたことだ……それに俺はお前を護るためにいるんだぞ?」
「それはわかってるよ、でも慣れないものはなれないの!」
「我慢してくれよ……もう十六歳だろ?」
「ふん、二百五十歳の黒さんにもう十六歳とか言われたくないよーだ」
「ガキかお前は……」
黒さんがあきれたようにそう言ったあと、明るい声が後ろから聞こえた。
「いよっす! おはよう、誠君!」
「なんだ、暗井か……」
「うわ、なんだってはないよ誠おー」
「しっかし、相変わらず朝からハイだね暗井」
「おうよ! この暗井様は、名字で暗いなんていう雰囲
気を吹っ飛ばすために毎日頑張っているのさ!」
この朝からやけにテンションの高い高校生は、暗井信士。
僕の唯一の小・中・高と学校が同じだった親友で、暗井とあるけど性格はその正反対で朝昼晩ずーっとこんな調子で騒がしい奴、どうして疲れないのか本人談によると……「名字が暗井だから暗いなんっつー印象を女子たちにつけないためなら疲れなんてどうでもねえ!」だそうだ。ようにはモテたいだけ、でも基本的僕や他の友達を大切にするからウザい奴だとは言い切れなかった……
「にしても、暗井がこんな時間に登校なんて珍しいね」
「昨日は、霊探しやらなかったからな」
暗い印象をつけないようにしてても、趣味は暗かったりする暗井……普段はバスケット部に所属したけど、兼部でオカルト研究会にも入っていた。それを僕以外の生徒には隠していた。意外と霊とか信じているらしかった……
「っていうか、今誠の隣にいるしな」
「は!?」
「うん、黒髪の二十代ぐらいの男の人が……」
「俺のことか!?」
ぼーっとしていた黒さんが自分のことを言われてびっくりしたけど、こっちはもっとびっくりした……
「暗井、見えてるの?」
「んー、半透明だけどな少しは見えてるぜ?」
「く、黒さん……どうしよう」
「半透明ならまだ問題ねえよ……だけど、本当に見えてんのか?」
「そこにいるじゃねえーかよ、でも朝から霊を見るなんて珍しいな」
暗井が指をさした先には、黒さんが立っていて本当に見えてることを証明した。
黒さんのことは、このまま隠してても仕方がないので思い切ってあの有名なかくかくじかじかという魔法の呪文で一通り紹介することにした。
「ふーん、それで黒さんは誠の横にいるのか」
「理解してくれた?」
「ああ、一応はな……だが本当に妖怪なんていたんだな! 俺、霊とかは信じてたけど妖怪までは信じなかったぜ」
「霊は信じてんのに、妖怪を信じないってどういう信念だよ」
「いや、黒さんみたいな人間に優しい妖怪がいるとは思わなくってさあー、妖怪は怖いものじゃないかって信じたくなかったんだよ」
確かに首長男を始めとして僕を食べようとして襲ってきた妖怪は一週間に十もいた。妖怪が怖いといったら怖いかもしれない、でも優しい妖怪にとってそれを言われたら悲しくなることだろう。
「まあ、どうにせよ見てもないのに勝手に決め付けるなってことだよな」
「事実言っちゃうとそうなるよね」
「仕方ねえよ、妖怪が昔人間に残していった印象は何百年経とうとも消えることはねえからな」
妖怪はもともと人間と一緒に暮らしていたらしい……でも、妖怪が人間を食べる美味しさを知ってしまって人間を襲うようになってから妖怪は人間の恐怖としかならなくなり、しまいにはある陰陽師によって別世界に飛ばされてしまったんだという。反妖怪政府組織は、このことを長く根に持っている妖怪が集まってるから人間を憎んでいるだと黒さんが言っていた。その時についた妖怪の印象が現代にまで及んで、人間もまた妖怪を憎んでいるんだと……
学校に着いた僕らは、校舎に入った僕らは時計をみてびっくりした。いつもは余裕で登校していたのが今日に限って遅刻ギリギリラインを時計の針が示していたからだった……少し早歩きで僕と暗井は、なんとか遅刻にならない時間で教室に入ることができた。
「はあ、間に合ったか……」
「遅刻だけは避けたいからね」
「大学でも狙ってんのか?」
「うん、まあね……将来の夢はまだないけど」
「早目に夢は見つけろよ?」
そのあと黒さんが小声でなにかつぶやいたけど、よく聞こえず僕も特別に気にしなかったので、自分の席についた。