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ツカノアラシ@万恒河沙
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人魚の飼い方

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そして、その日に限って、何故か今まで尋ねてみようとしていなかったコトを尋ねてみる気になったのである。何故、聞きたくなったのか。虫の知らせというものだったのだろうか。その理由は、よく解らない。もしかすると、ただの気まぐれ程度だったのかもしれない。
いま思えば、その気まぐれが全ての始まりだったのだろう。本当に世の中なにがきっかけになるかわからないから侮れないものである。
「アア、これは人魚が入っているのです」
男は、にっこり笑ってそう答えた。
幸せそうなカオだった。
幸せそうなカオだった。
「私の人魚が箱に入っているのです」
人魚?男の答えを初め理解しきれなかった私は思わず男の顔を穴が開くほどじっと見つめてしまった。それもその筈、どこの誰が「箱の中は何ですか?」と質関して、相手からいきなり箱の中に人魚が入っていると答えられると予想できようか。黒い隈が縁取っている落ち窪んだ目に、こけた頬。影の薄そうな無愛想で物憂げな調子の声、それ以外はまったく取り柄(?)のなさそうな平凡な顔の男だった。
「王子様を殺し損なって最後には泡になって消えてしまう、あの人魚ですか?」
この時の私のカオといえば、たぶん顔の蒐集家がいたと
したら、絶対に蒐集したくなるような世にも珍しいけったいな表情を浮かべていた事だろう。男も私の様子に気がついたのか、喉を微かに震わせるような奇妙な笑い声をたてた。
メフィストフォレス。彼の笑い声、かくのごとしか。
私も、一風変わった(いや、一風以上)年下の友人がいるお蔭で、警察官という現実的な商売に就いているわりには妙な知識だけはあった。人魚というものは生まれてこの方見たことはないけれど知識としては知っている。この時、私が驚いたのは人魚そのものではなく箱に入れて飼うことのできる人魚が存在していることだった。
私の僅かな知識の中で今までそんな人魚は知らないし、聞いたこともない。もしかしたら私の勉強不足なのかもしれない。
「さう、その人魚です。実は、この私と人魚は、この世に私たちの他には誰もいないと思うぐらい愛し合っているのです。だから、人魚は箱のなかに入っているのです」
男はそう言うと、私なんぞには興味を失ってしまったのかのように、(いや始めから興味なぞもっていなかったのだろう、何故だか私にはわかった)またそぞろ歩きだしたのだった。
人魚の入った箱。