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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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人魚の飼い方

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玲はこちらの力が抜けるほど簡単に否定した。玲はこれから、この地で知り合いになった男に会いにいくこと、そして私もきっとその男と知り合いになりたいと思うに違いない、となどと歩きながら説明をしてくれはした。しかし、はっきり言って私には何か何だか訳が解らなかったのは言うまでもない。玲の行き先は、すぐ下が切り立った崖に建っている、古びて今にも壊れそうな屋散らしいことが、歩くうちに私はは分かった。なぜなら玲が歩いている先には、その屋散ぐらいしかヒトらしいモノが住んでいそうなトコロがなかった為である。屋敷が近づいてくるごとに、その屋敷がすっかり荒れ果てていることが見てとれた。いったい、屋敷にはどんな人物が住んでいるのだろうか。それよりも、荒廃した屋敷はヒトが住めるところなのだろうか。などと、いろいろと、取り留めのないことを考えているうちに私たちは、屋敷の金属が変色して青緑色になっている門にたどり着いていた。
『畔柳』
という墨でかかれた古びた木の表札が門の柱に釘一本で支えられていた。緩みきっている釘で支えられている表札は時折風に爛られてカタン、カタンと、乾いた音を立てる。キイキイと耳障りな錆びた音をしきりに立てる金属製の門を潜ると、そこは何年、いや何十年も手入れがされていないような放ったままの庭。荒廃した園。廃園の館。私は玲の後を運命と宿命という名の鬼達に両手を取られてついていく。
玲には、そんな私のような繊細な感慨も浮かばないのか普段と全く変わるところはない。それどころか、いつにもまして元気に見えるのは、私の目が腐っているからだろうか。そして、玲はいまにも壊れそうな玄関に到着すると罪の門番をしている金属製のライオンの顔をこれでもかというくらいに叩き鳴らしたのである。