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ツカノアラシ@万恒河沙
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novelistID. 1469
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人魚の飼い方

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玲は絽の黒い男物の和服を着、同じく黒い羽織を羽織って、細身の黒い仕込み杖を振り回しながら歩きだした。振り返りもしない。私がついてくるもののと、疑いもしていないのに違いない。そして、私も運命の前にはあがらえないことを知っていた。無駄な行為はするだけ損である。すれば、するほどずぶずぶと深みにはまるに違いない。私はため息をつくと自分の運命を素直に受け入れて、ボーイソプラノのような綺麗な声でボロディンのダッタン入の踊りを歌っている玲についていくことにした。
「玲クン」
「なんですか、警部。もしかしてダッタン人の踊りが気に入りませんでした?いまからでも遅くはないからワグナーのワルキューレの騎行に変えましょうか」
妙なコトを気にする子である。どちらにしても、ダッタン人の踊りもワルキューレの騎行も普通は鼻唄で歌うような曲ではない。
「だれがそんな事を言ったかいな。俺が言いたいのは、これから俺たちが何処へ行くのか?という事だよ。それ以外に聞きたいこともないし、聞くつもりもないよ」
私は出来るだけハードボイルドの主人公のように、冷たくそして素っ気なく尋ねた。しかし、非常に残念なことに
私のハードボイルド的態度には、誰も気がついてはくれなかった。性格に似合わないことは、そうそうするものではない。
「あれ、おかしいなぁ。ボク、言いませんでした?」
玲は実に不思議そうな顔をして小首を傾げた。玲は簡単にそうは言うが、私は聞いた覚えが全く無い。そこで私は辛抱強く、更に質問を続けた。
「いつ、言ったんだ」
「昨日、夢のなかで」
「……」
ああ、駄目だ。まともにこの子に付き合っていると私の寿命がどんどん削り取られていくような気がする。実際にはそうでは決してないのだが、わたしでさえがこうまで思うのだから、この子が相当おかしいのはおわかりになれると思う。どうしてくれよう不如帰。
「どうしました、目が死んでいますよ」
「誰の責任で、俺がこうなってると思っているんだ?」
「ボクじゃないことは確かですね」