灰色の双翼
メリアに家族はいない。だから昔、どんな形であれ家族がいる自分が羨ましいとも言っていった。それを思い出して、今の言葉を彼女がどんな思いで言ってくれたか分かってしまって胸が詰まった。
「メリア……」
そのユイスの想いを感じ取ったのか、ふとメリアの表情が和んで笑みに変わる。
「とにかく行きましょう」
メリアが笑ってユイスに手を差し延べる。鎖ではなく、直接ユイスの手を取って歩き出す。回りの人間がそれを見て不快な顔をしても気にすることなく、ただ真っ直ぐ前だけを向いて。
こういう時、本当にメリアは強いんだと感じていた。何かあるとすぐに立ち止まってしまう自分と違って、彼女はどんな時でも前へ進むことをやめない。その姿勢にいつも自分は励まされて、もう一度歩き出す勇気を与えられる。
「ありがとう、メリア……」
正面から面と向かっては言えなくて、こっそりユイスはささやいた。
「なぁに? 何か言った?」
くすくすとメリアがわざと聞こえないふり。
何でもないとぶっきらぼうに言い放って、足を早めてメリアの隣に並んだ。
そうして二人は他の者たちとは違って、和気藹々と歩いていく。
道はすでに大通りを過ぎ、宿屋の並ぶ界隈へと向かう道に差し掛かっていた。