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朧木君の非日常生活(5)

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「朧木くん、話が変わるけどいいかい?」
「是非とも変えていただきたい」
「僕らは神隠しに会った」
「それが本題だ!」
全く何を考えているんだか。
「さて、ひとまず歩こうか」
そう言い、橋を渡りなおし歩き始めた。 
鬼火ちゃんのことだ、見知らぬ風景にはしゃいで何処かに行ったんだろう。
神隠しも楽しみだったみたいだし。
「でも蜻蛉さん、何か鬼火ちゃんを探すヒントがないとダメじゃない?」
そう、ここは神域。
未知の領域。
ただ闇雲に探しても見つかるわけがない。
「そんなの簡単さ。尋ねればいいんだよ」
「誰に?」
「――山神、もとい天狗に」
「・・・・・・は?」
山神もとい――天狗。
確かにそう言った。
「朧木くん、これは仮定でも断定でもない――確定、だよ」
とてもじゃないが信じられない。
「仮にいたとしても、何処にいるんだよ」
そこで、蜻蛉さんはふいに笑い出した。
声をあげて高らかに。
「何を言ってるんだい、朧木くん。いるじゃないか、そこに。ほら」
そう言いながら蜻蛉さんは俺の後ろを指差した。
俺は条件反射で後ろを振り向いた。
「んなっ・・・・・・!」
そこにいたのは。
――天狗
赤い顔、長い鼻、白い民族衣装、肩越しに翼も見える。身長は二メートル弱程度。
紛れもない――天狗。
紛れもない――山神。
作品名:朧木君の非日常生活(5) 作家名:たし