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ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ―

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でも、わたしはそのワンピースの値札を見て固まった。今私が着ている服は、デパートのセールで買った一九八〇円のTシャツと一〇〇〇円の短パン。合計二五〇〇円。マネキンの服についていた値段は、私の服の合計よりゼロが一つ多かった。五〇〇〇円、足りなかった。
「いいものは高いんだよね。でも服は普通にそれくらいするよ」
値札をみて固まっている私をみて、沙織が言った。
「えっ、でもこの値段だと……」
「まあ、試着するのはタダだからさ、一回着てみたら?」
迷っている私を放置して、冴は店員さんを呼んだ。

初めてワンピースを着た気がする。足がスースーするのがすこし落ち着かない。鏡に映る自分を見ると、そこにはさっきマネキンが着ていたワンピースを着ている自分が写っている。服の肌触りは、まるで服にやさしく抱きしめられているようで心地よかった。なんだかはずかしいけど嬉しくて、試着室の中でくるっと一回転してみた。スカートの部分がひらひらとなびく。自然と笑みがこぼれた。

「変じゃないかな?」
試着室のカーテンを開け、冴と沙織に聞いてみた。
少し、沈黙が流れた。やっぱり、似合ってないのかな。
「これは……随分まあ」
「……うん、これはちょっと、びっくりだね」
「……あはは、やっぱ似合ってないよね」

「馬鹿その逆よ。どこのお譲様かと思った」
「彩子ちゃん、これ絶対買った方がいいよ!」
「でも……お金が……」
「沙織」
「うん、わかった」
二人は自分たちの財布を取り出して、私に五〇〇〇円を渡してくれた。
「これで足りるよね。こういうのは妥協しちゃだめよ」
「健闘を祈る!! 」
二人に深く感謝して、私はワンピースをレジに持っていった。


目が覚めたのは目覚まし時計の鳴る三〇分前。
目覚ましが限界まで音量を上げてから仕方なく起きる。
そんな普段の私からは考えられない現象に自分もびっくりした。
今日、私は森下君と動物園に行くのだ。あっ、いや、でもただ絵を描きに行くっていう約束なんだから別にそんな大したことではないはず。