ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ―
「まったとぼけちゃって!あんたらの事、クラスでも話題騒然よ?」
「茜ちゃんの隠れファンって結構多かったもんね」
「だから!なんの話なの!?」
「決まってるじゃない。森下君とあんたの事よ」
「……へ?」
「壮絶おてんば娘茜谷彩子とミステリアスな美少年森下優一の謎の関係!」
「放課後の図書館で目撃談多数!」
「さて、いったい二人はどういう関係でしょうか?」
「でしょうか?」
目を好奇心でランランと輝かせながら二人は私を見つめた。
混乱した頭を整理する。まって、ちょっとまって。これ、いったいどういう事?
森下君と私の関係?えっ?えぇー!?
「そっ、それは……その、なんというか、その……」
「あー、これはマジだね」
「彩子ちゃん顔がゆでダコみたい」
「大丈夫!あんたの恋路を邪魔しようとするやつは私がシメとくから」
「応援してるから頑張ってね!」
私の心に大きな動揺を与え、二人はまるで台風のようにやってきて去って行った。
その日以来。なぜか私は森下君の事を目で追っていた。
授業中、窓の外をボーっと眺めている彼が気になった。
いったい何を考えているんだろう。そんな事を気が付くと考えている。
部活がない日の放課後が待ち遠しくて仕方がなかった。
真剣に絵を描く彼の横顔を、どうしてもチラチラ見てしまう。
ある日。私たちは一緒に図書館へ向かっていた。
言われてみて気がついたけど、森下君は整った顔をしている。
眼はくりくりしていてまつげが長い。髪をもうちょっと長くしたら女の子と間違われそうな、小動物を思わせる中性的な雰囲気を出している。
正直、下手な女の子より可愛いかもしれない。
そんな事をボーっと考えていると、目が合った。
「どうしたの?茜谷さん」
不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「いや、ごめん。特に何でもないよ」
なんだか急に恥ずかしくなってきて、私は目をそらしてしまった。
森下君は頭の上にクエスチョンマークを出している。
妙な沈黙が私たちの間に流れた。
(どうしよう、なにか話題。この感じから抜け出す話題は……そうだ!)
「そういえば、森下君ってなんで動物の絵ばっかり描いてるの?」
「え、いや、茜谷さんが描いてくるように言ってきたからだけど…?」
作品名:ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ― 作家名:伊織千景