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ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ―

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「冴と沙織。あなたの時はあの二人だった」
「……」
「今、彼は世界で自分一人だと思っているんじゃないかな。以前のあなたのように」
「……」
「私があなたを選んだ理由。分かってくれた?」
「……はい。で、でも、私は何をすれば……」
「そばにいるだけでいい」
「そばに、いるだけ?」
「そう。世界は自分ひとりじゃないって分かってもらう。それだけでいいの」
「……私にできるかな」
「だーいじょうぶ大丈夫!あなたはいつも通りのあなたでいいのよ」
そう私に告げると、キリッっとした真面目な顔から一転。和田先生はニカっと笑い、私の肩を叩いた。


「うーん」
家に帰ってランドセルを置き、私はお父さんのアトリエで新しい練習方法を考えていた。
さすがに毎週間百匹は厳しすぎるし、自分も大変だ。練習方法を変えないと。でも、どういう事をすればうまくなるんだろう。
「絵は楽しんで上達するものだよ。だから描きたい物を、好きなやり方で描いてみなさい」
キャンバスに目を向けたまま、お父さんは私に言った。
「書きたい物を、好きなやり方で…」
お父さんの言葉を口に出して繰り返した。
森下君が一番描きたい物……なんだ、それならあいつ、最初からやってたじゃない。
ちょっと反省した。技術ばっかり目が行って、肝心な、“楽しく絵を描く”ってことを忘れていた。
ちょっと嫉妬した。もしかしたら私より楽しんで絵を描いているかもしれない、森下君の純粋さに。
私はノルマを最低限にして、やり方、描くものは森下君が自由に選ぶという方法に切り替えた。
そうしたら森下君は、見違えるほど絵がうまくなっていった。
“好きこそものの上手なれ”ってことなんだろうな。
どんどんうまくなる彼を見ていると、自分の事のように嬉しくて、
気が付くと図書館に足を運んでいた。
自分の心の中で森下君が次第に大きな存在になってきていることに、
私はこの時点では気付いていなかった。


「あ〜かね〜♪」
「あかねちゃーん♪」
「なっ、何よ冴、沙織。二人でニヤニヤして気持ち悪い」
部活の帰り、校門の前で冴と沙織がなにやら訳知り顔で話しかけてきた。
「いやーああいう奴がタイプなんだね」
「そう?私は結構お似合いだと思うよ?」
「ごめん、話が全然見えてこない」