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ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ―

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「なに?私に皆の前でこう言えとでもいうの?
“森下君が一人ぼっちなので皆仲良くしてあげましょー”って? 
こんなので本当に友達が出来るかしら?」
「うっ……そ、それは……」
「茜谷さん。あなた絵が好きでしょ?」
「えっ、あっ、はい。好きですけど。」
「今日の放課後、図書館に行ってみて。もう一度言うけど、
これはあなたにしかできないことなの」
「私にしかできない、こと?」
「そう、あなたにしかできない。」
「それと、一度でも話しかけてくれれば…まあ、昨日のガラスの事、
許してあげるからさ」
「うっ……、」 
「それじゃ、頼んだわよ〜。頑張ってね♪」
和田先生にはかなわない。今まで散々迷惑をかけてきたからなおさらだ。
完全に弱みを握られた私は、本当に、本当に仕方なく図書館へ向かった。

森下君との初めての会話は、ガラスの修理代のかわりという最悪な形で始まったわけだ。


図書館に着くまでの廊下で、私は森下君になんて話しかけるか考えていた。
そもそも、その時私は森下君の事を何一つ知らなかったのだ。
半年も同じクラスにいたのに、彼の好きそうな事の一つも思い浮かばなかった。
いったい彼はどんな奴なんだろう。
脳みそをフル回転させて、話題になりそうな事を考える。
彼は窓側の、しかも後ろから三番目という素晴らしい席に座っていた。
そして、いつも窓の外の景色を見ていた。
窓の外を見ている時の森下君は、なんだかそこに存在しないようで、
今にも消えてしまいそうで、あまり声をかけようとする人はいなかった。
「宇宙人と交信してんだよ、アイツ」
みんなは冗談交じりにそう話していた。
(宇宙人はなんて君に話しかけてるの?)
……うん、私は喧嘩を売りに行くつもりか。
(昨日のお笑い番組見た?)
うーん、これは外した時に絶対困る。絶対気まずい沈黙が流れるに違いない。
そんな事を考えているうちに、図書館の扉の前についてしまった。
(ええい! なんで私がウジウジ悩まないといけない! 
もうどうにでもなれ!)
覚悟をきめて、私はやたらと重い図書館のドアを押しあけた。

 小学生には広い、広すぎる図書館の中。
その一番端の、やっぱり窓際に森下君はいた。
こちらに背を向けていて、熱心に何かをノートにかいている。