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ドードー鳥のウィンク―ハローグッバイ―

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お父さんの声を聞いて、私はトラックに乗り込もうとした。
そんな時だった。後ろからあの声が聞こえてきたのは。
「ま、待って! お願い待って!!」

一番聞きたくなかった。でも聞きたかった声。
私は車から飛び出して振り向いた。

「えっ、何で……」
そこには。自転車に乗って、息を切らしている森下君の姿があった。
「良かった。間に、合った」
「どうして……学校は?」
「あはは…、風邪引いたって電話しておいた」
和田先生、たぶん気が付いているんだろう。だから昨日、あんなことを言ってたのか。
ちょっと悔しいけれど、嬉しかった。
「これ、開けてみて」
さっと何かを渡された。一冊のスケッチブックだった。
声を出すと、なんだか泣きそうで、黙ってうなずいて、スケッチブックを開いた。
そこに書かれていたのは、
最初に図書館でみた、
私が、森下君と仲良くなるきっかけになった。
あの、ドードーの絵だった。
消しゴムでなんども消したあとがある。
何度も書き直したのがわかる。
けれど、絵の中のドードーの姿は、初めに見たあの絵のレベルをはるかに超えていた。
それに、森下君が込めた、暖かくて、優しい心が、この絵からにじみ出ていた。

「情けないけど…、今の自分の気持ちを言葉にも、文章にすることもできなくて…。でも、僕には絵がある。一緒に描いて、見せ合いっこもして……、ちょっとずつだけど、上手くなって…。自分で言うのもなんだけど、独特の味があって、見てて引き込まれそうで、なにより…す、好きだって言ってくれた、僕と茜谷さんとの間の、大切な、絵。だからこの絵は、僕の気持ち」
「その絵を持っていてくれたら、僕たちはきっとまた会える。そう思うんだ。だから……茜谷さんの事、ずっと忘れない」
抑えきれなくなった涙が、地面の乾いたアスファルトを濡らす。
トラックから、お父さんの呼ぶ声が聞こえる。もう、行かないと。
「時間…だね。…今まで、本当にありがとう。さよならは…言わないよ。…また、いつか」
「うん…また…、きっとまたいつか…!絶対に…、絶対絶対忘れないから。君のこと…、ずっと思ってるから…!」
涙をぬぐって、精一杯笑顔で森下君を見る。
私たちは一歩ずつ、一歩ずつ、離れていく。
お互いを見つめあいながら。
また会えることを願いながら。