僕らのLOVE STYLE・・・14
テスト前には?
学祭は9月の最後の土曜日だったが、その前に前期テストがある。始業式始まってすぐに行われるので、実は夏休みもおちおち遊んでいられないのが事実だった。テスト期間の前1週間は、部活も委員会も一斉に休みになる。生徒会など特別の場合などを除いてだが。
「・・・ということで、しばらくはテスト勉強するから」
机に向かう誉の自室には一樹がいた。いつものことではあったが、一樹にとってはしばらく苦痛の毎日が続くこととなった。机に向かう誉の隣でその様子をジッと見つめる一樹・・・。
「・・・ヒマだったら、一緒に勉強しようよ・・・」
せっかく来てくれている一樹を邪険に扱うこともできず、誉は一樹に教科書を手渡した。
「次期会長が追試なんてみっともないでしょ?わかんないところは教えるからさ」
渡された教科書をパラパラとめくってみるのだが、範囲が広すぎてどうにもならない。というのもこの天羽は前期と後期、1学年に二度しか試験がない。それも各3日間のみ。半年間勉強した範囲を一気に出題されるのだから、よほど勉強していないと簡単に落第する。現に2、3年のクラスのひとつは、留年した生徒用にクラスが設けられている。ひとクラス分の生徒は留学してしまうということだった。
一樹は教科書を誉に返すとベッドにゴロンと横になった。
「まったくわからない・・・」
その様子を見て誉が深いタメ息をつく。
「一樹解ってる?留年するってことは、来年ボクと違う学年になるんだよ?それでもいいの?」
「・・・それはイヤだ・・・」
誉の言葉を聞いてぼそっと一樹が呟いた。確かに考えてみればそうだ。誉は高等部から天羽に入った。エスカレーター式のこの学園で中途入学できるのだからそれなりに成績はいいはずだ。一方の一樹はというと小学部からなんなく高等部まですすんだ・・・部活のお陰で。中等部から高等部へ進学する際に先生に言われていたことを思い出す。
『高等部は中等部とは違い、容赦なく落とすから部活ばかりしていてもダメなんだぞ』
なぜこんな一樹が高等部で2年に上がれたのか?もちろん誉を生徒会に誘うため、自分が留年するわけにはいかなかったからだ。無事誉を生徒会に誘い、念願の恋仲にもなれた。自分の想いが叶った一樹は勉強よりも誉との時間を優先していたので、勉強の事など考えていなかったのだった。
「じゃあ、一緒にやる・・・」
渋々誉から教科書を受け取り誉の隣に座った。さすがに別の学年になってしまう・・・そう言われては仕方がない。
「・・・ここわかんねぇ・・・」
「どこ?」
「この文法・・・」
一樹が誉の部屋に出入りするようになって初めてなにもなく終わった一日だった。
それから数日間は一樹もまじめにテスト勉強をしていた・・・もちろん誉の部屋でだが。
『お前と一緒の方が捗るんだよ』
そう言われてははまれも一樹を追い返すわけにもいかない。とにかく追試だけは免れてもらわないと・・・。
テストが翌日に迫った夜。
「これで追試はしなくても大丈夫だろ?」
グッと背伸びをしながら一樹が誉に聞いた。
「うん。よくあの短期間でここまでできたね?」
「そりゃ、お前と離れるのはゴメンだからな」
一樹の指が誉の太ももをツーっと滑っていった。
「なぁ・・・もう我慢できねぇんだけど・・・」
テスト勉強をしていた約1週間、実は一樹は誉に全く触れていなかった。身体はもちろんのこと唇さえも重ねていなかった。実は一樹にも考えがあり、前に『待て』を覚えさせられていたのでちゃんと待てができればそれなりにご褒美がたっぷり貰えるだろうと思っていたのだ。
「ダメだよ?」
一樹の手をピシリと払い誉が真剣な眼差しで一樹を見た。
「まだテスト終わってないんだからね?」
チッとした打ちをししばらく考え込んでいた一樹だが
「じゃあ、学年で5番以内に入ったらご褒美・・・ってのはどうだ?」
一樹が誉の目の前にパッと手を広げる。不服そうな・・・でも自身に溢れた顔の一樹。
「うーん・・・。5番以内なら・・・」
「やったっ!」
嬉しそうに一樹が誉を抱きしめる。
「5番って言っても、全教科だからね!じゃないとダメだからね!」
「わかった、わかった!」
名残惜しそうに誉の耳にキスを落とした。
「みてろよ!絶対約束果たしてやる!」
大きくガッツポーズをし、一樹が満足気に言った。
「・・・大丈夫なのかな・・・」
自分の身よりも一樹の生成の方が心配な誉だった。
作品名:僕らのLOVE STYLE・・・14 作家名:沖田晴