僕らのLOVE STYLE・・・14
テストと独占欲
前期試験は3日間かけて行われる。高校では珍しいマークシート方式だ。
現代国語・古文・漢文・数学・日本史・世界史・科学・化学・英語・・・9科目を各日3教科ずつに分けて行う。
後期試験になるとそれに加え、音楽・体育・美術・経営学・帝王学・自由レポートと1日5教科となる。普通の高校とは違い、天羽の学生にとっては将来必要になるであろう経営学や帝王学が試験に含まれているのも特徴だ。また最後の自由レポートはこの学園での一年間において自分なりにどう過ごしてきたか、さらには一年間で学んだことなどを作文形式に書くものだ。次学年にあがるにはかなりの重要性を持っている。
試験初日、さすがに勉強しただけあって一樹も簡単に回答欄を埋めていった。
----------たまにはちゃんと誉の言う事も聞いてやらねぇと愛想つかされちまうからな・・・
マークシートということもあり、なんなく3日間の試験を終えられそうだった。
迎えた最終日。
「誉!どうしてもわかんねぇ!」
一樹が最も苦手としている英語だった。しょっちゅう海外に行っている誉には簡単なのだが、使う機会のない英語に一樹の方は四苦八苦していた。
「・・・しょうがないなぁ。とにかくヤマはるからそこだけでもやってみなよ?」
「助かる!!」
いつもならばここで抱きつくはずの一樹だが今はそうもしていられない。この時間の短い抱擁よりもあとのご褒美の方が大切だったのである。
前期試験最後の休み時間、誉に教えてもらった試験のヤマを必死に勉強している一樹の姿があった。誉の事以外でこんなに必死になっているのを他のクラスメイトは見た事がなかったので、みな物珍しそうに眺めていた。しかし、その裏には【誉とのご褒美】が待っているのは誰も知らない。
試験終了を告げるチャイムが鳴った。
「後ろから問う案を回収するように!」
全ての答案用紙が先生の元へ届けられる。
「これで前期試験はすべて終了だ。なお、結果は週明けの月曜日廊下に張り出されるので覚悟しておくように。以上解散!」
先生が教室を出ると周りから安堵の声が出た。
「月曜か・・・週末が長いな・・・」
一樹が思いふけっていると
「一樹先輩いますかぁ?」
ガラッと教室のドアが開いた。
----------月島だ。
クルクルした瞳で一樹を探す月島・・・。
「一樹~!愛人が来たぞ!」
「違げぇよ!バカ!」
クラスメイトに茶化されながら一樹が月島の元へ進む。
----------何を話しているんだろう?
誉は気になってしょうがない。
「誉~?あんな愛人付きよりオレんとこ来いよ?一樹よりもっと可愛がってやるぜ?」
誉の席に椅子を寄せ、隣の席の相良(さがら)が話しかけてくる。
「え・・・?いや・・・ボク・・・」
「相良!!!!」
一樹の声が教室に響いた。相良がクスッと笑い両手を上げホールドアップのサインを一樹に送る。
「はいはい・・・。」
ガタンと椅子を元に戻す相良・・・。しかし去り際
「オレ、浮気はしない主義だからな。」
誉の耳元で相良が囁いた瞬間、その声に背筋がゾクッとなるのがわかった。
「誉、ちょっと来い・・・」
一樹に無理矢理手をひっぱられ連れてこられたのは生徒会室。
「・・・相良、何だって?」
腕を組み話す一樹はイライラがはたから見ても解る。
「え・・・?」
「え?じゃねぇよ!あんな距離で何言われた?」
あぁ・・・と誉は思い出した。別に気にすることでもなかったので、すっかり忘れそうになっていた。
「なんか、オレは浮気しないからとか、可愛がってやるとか・・・?」
「くそっ!」
(言うんじゃなかった・・・)そう思ったのは遅く、次の瞬間誉の手は一樹に掴みとられていた。
「オレは浮気なんかしてねぇ・・・。オレは・・・オレには・・・」
そのまま一樹の唇が深く重ねられた。きつく掴まれる手首に、深く絡みつく舌・・・。息もできないほどの口付けが続いた。
「オレ以外は・・・お前に触れる事は許さねぇ・・・」
独占欲の固まりが誉に突き刺さる。
「ボクだって・・・同じだよ?」
ふんわりとした笑顔で一樹を見つめると、一樹は深く長いタメ息をついた。
「・・・ダメだな・・・オレ・・・」
どんだけ一樹が深く愛してくれているか誉も解っている。独占欲というよりも病んでいるのではないかというくらい、一樹の誉に対する愛情は深く激しい。
「ボク、今日は部活あるんだ。帰ったら連絡するから・・・」
「あぁ・・・オレもだ・・・」
さっき月島が来ていたのは部活の事か・・・と、誉は少し安心した。
「・・・あとで・・・来てくれる・・・?」
真剣な顔で誉が一樹に告げた。
(部屋に・・・?もしかして・・・?)
「あ・・・あぁ。必ず行く。」
軽く唇を重ねると二人は部活への道を歩いた。
作品名:僕らのLOVE STYLE・・・14 作家名:沖田晴