朧木君の非日常生活(4)
「大丈夫だ、朧木くん」
もはや何が大丈夫なのか分からないが、蜻蛉さんが言うのであれば間違いないだろう。
「しかし、おかしい話だよね。朧木くん。鳩って平和のシンボルのイメージがあるだろ?」
「あぁ確かに、言われてみればな」
「けど、ここは平和とはかけ離れた場所だよ、人間的には。だって神隠しに会うじゃないか」
「確かにそうだけど・・・・・・てか、それどころじゃないだろ、今は」
この人は一体何を考えているんだろう。
鬼火ちゃんが消えたって言うのに。
「まぁ、最後まで聞いてくれたっていいじゃないか。それでね、朧木くん。鳩が平和のイメージで定着したのは戦後の西洋的な考えが入ってきてからなんだよ。それまでは、決して平和なイメージではなかったんだ。だった神の使いだよ?」
「神の使いだと平和じゃないのかよ」
しょうがない。話に付き合ってやろう。
何かヒントが見つかるかもしれないし。
「神と言っても戦の神だよ。八幡様のハト、と言われていたんだからね。この八幡様が戦の神さ」
それは知らなかった。
蜻蛉さんが、何が言いたいのか分かってきた。
「朧木くんは、やっぱり頭の回転が速いね。感嘆だよ。実にね」
そう要するに今回の神隠しのヒントは。
――鳩
神の使い――神使
そう、俺は忘れていた。
失念していた。
あまりにも簡単なことじゃないか。
思い返せばすぐに分かること。
何故気付かなかったんだ。
滑稽なのは俺だ。
作品名:朧木君の非日常生活(4) 作家名:たし