小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

朧木君の非日常生活(4)

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

 
 「朧木くん、もそろそろ準備はいいかい?」
 「もう大丈夫。行こう」
 そう言うと、蜻蛉さんがLED式懐中電灯を点灯させ、鳥居をくぐった。
 「まずは道なりに進もうか」
 ――道。
 と言っても、それは道なき道に等しい表現だ。
 禁足地だけに道が整備されているわけでもない。
 ただ不気味で不思議で不可解だ。
 鳥居の延長上に通れるような所があるだけ。
 まるで『こっちにおいでよ』と誘っているかのように。
 決して『道』ではない『未知』。
 人の恐怖という感情を直接逆撫でするかのような『道』。
 人の畏怖という感情を直接覆いこむような『未知』。
 「僕の予想が正しければ開けたところに道標があるはずさ。これ以上は神域だ、と示す道標がね」
 蜻蛉さんは、恐怖の感情の欠片もなく、足元を懐中電灯で照らしながら進んでいく。
 「朧木くん、口数が減ったね。そんな怖がらなくたっていい。幽霊なんて出て来ないんだから」
 それはいたって無茶な注文だ。
 人間は、本当の恐怖に直面すると喋れなくなるものなんだから。
 鬼火ちゃんは、鬼だから先から怖がるような様子もなく見慣れない世界に周りを見渡しているが、俺は違う。
 幽霊の存在を信じる一般的なニートだ。
 その証拠に全身鳥肌が立っている。
 むしろ気分が悪くなりつつある。ここばかりは、唯一の長所といても過言ではない『凄まじい環境適応能力』が発揮できていない。
 まだ烏とかが鳴いてくれていた方が助かる。
 気が紛れるから。
 それっぽい雰囲気だなぁ、って思うことが出来るから。
 しかし、辺りは相反して。
――静寂
 まるでこの『藪地蔵の森』が外界から隔離されているかのような。
――静寂
 聞こえてくる音は、話し声、呼吸、足音・・・・・・人間が発する音のみ。
 「朧木くん、神域への道のりは案外早かったみたいだよ」
 蜻蛉さんの懐中電灯が照らした先には、一体の地蔵。
 ――違う
 横一列に何体もの地蔵が並んでいた。
 ここから引き返せと言わんばかりにこちらを睨みつけていた。
 「くくく、決まりだね。二人とも。あのトピ主の友人が神隠しにあったのはあの先だよ」
 楽しそうに蜻蛉さんが言い、地蔵の脇を通り抜けていく。
 本当に趣味が悪い。

作品名:朧木君の非日常生活(4) 作家名:たし