桜のお話
根を傷めた桜は、その後何年か花を咲かせることが、できません。
そればかりか、枯れてしまうこともあるのです。
だけどその家族は、傾いだ幹を直してくれました。
痛んだ根に、柔らかな土を与えてくれました。
おかげで私は新たに根を張り、どうにか立ち直ることが、出来ました。
力を合わせて押してくれた3人兄弟のお陰でした。
そして長男が中学を卒業した年、花をようやく咲かせることが出来ました。
その春、あの賑やかな家族は、小さな家を引っ越して、行ってしまいました。
でもほらここ、あのわんぱく兄弟の成長のしるしが、今でも残っているでしょう。
毎年背比べをしていた3人兄弟の成長を、見届けられず残念でした。
でもこうして、幾すじも残っている背比べのあとを見るたび、懐かしく思い出せるのです。
台風一過のあの朝や、ささやかな花見の宴、わんぱくな兄弟達の笑顔を・・・。
それだけで私は、幸せな思いに浸れるのでした。