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桜のお話

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2.兄弟


 次に小さなお家に住んだのは、賑やかな家族でした。
わんぱくな男の子が3人、小さな家の小さな庭で、すくすく育っていきました。
いたずらやけんかをして、泣いて笑って、最後は、仲直りしできました。
はらはらしながら私は、それを見守ったものでした。
桜の季節になれば小さな庭にゴザを敷き、ささやかな重箱を広げ、わきあいあいと家族ですごしていました。

 ある桜の季節のことです。
縁側でじゃれあっていた3人が、枝にぶら下がって、枝が折れたことがありました。
小さなお家の、軒に向かって伸びた枝、いずれ切られる枝でした。
蕾のある折れた枝は、兄弟の学校に行きました。
クラスの窓辺を、しばらく小枝が飾っていた事と、思います。少し誇らしい気持ちがしました。

 夏の夜の事でした。台風がやってきたのです。
強い風が吹き、雨がつぶてのようでした。
枝はぎしぎし軋みます。葉が散りぢりと、飛ばされていきました。
ひと際強い風に、根が耐え切れずに、幹を傾けてしまいました。
翌朝、空は眩しく青く澄み渡り、小さな庭中に葉っぱや折れた小枝が、散っていました。
傾いだ幹の桜なんて、切られてしまうだろうと、思っていました。
それが運命なのだと、私は諦めていたのです。

 「兄ちゃん、桜が倒れちゃいそうだよ。」
末の男の子が、最初に見つけました。
「父ちゃんに言って来い。」
長男が末の男の子に、父親を呼びに行かせました。
そして、次男と一緒に幹を立て直そうと、押してくれました。

作品名:桜のお話 作家名:茉莉庵