ツインテール探偵くるみの密室
くるみが雪を払いながら事務所に入ってきた。
「足跡がないか見ようとしただけよ」
「危ないだろ。それからこれ」
テーブルにあった紙を渡した。
「わたしの名声を聞いてついに現われたのね、怪盗エース」
「ドアも窓も鍵が掛かっていたのに、変だな」
くるみはツインテールの髪を後ろに払い、
「それじゃ、探偵事務所は密室ってことね」
と、嬉しそうに言った。
「エースは足跡をつけずにミステリーハウスまで来て、密室に予告状を置いた」
そう言って、机に座って足を組んだ。
「今回は、『二重密室予告状事件』と命名するわ」
怪盗エースは歩美に間違いないから、足跡の問題はクリアーだろう。だが、鍵の掛かった事務所にどうやって入ったのか。
チャイムの音が聞こえた。
「放課後、じっくり調べるから、現場は保存しておいてね」
廊下に出ると、窓の下に傘立てがあり、ビニール傘が1本ささっていた。
「なんで、傘立てがここにあるんだ?」
「怪盗エースが動かしたんでしょ」
くるみと話していると、本当にいるような気がしてくる。
「ワトちゃん、見て。外側の壁に雪が積もってる」
くるみが体を乗り出して見ているのは出入り口に一番近い廊下の窓だ。
「雪が降ってたんだから、当たり前だろ」
「この窓の下だけなんて変じゃない」
確かに三つある廊下の窓の中でここだけに雪が積もっていた。
作品名:ツインテール探偵くるみの密室 作家名:へぼろん