The Over The Paradise Peak...
DEFCON 1
――日々悪化する世界情勢を背景に、陸上の兵器体系は大きな変化を見せていた。
レールガン(※1)もしくはサーマルガン(※2)と、ロケットアシスト砲弾(※3)の登場により、MBT(Main battle tank、主力戦車)同士の最大直接砲戦距離は瞬く間に一万メートル(※4)を超え、その圧倒的な破壊力で地上の戦闘を支配している。
更に先進諸国の戦闘部隊では、ほぼ全ての兵士が増力機構付の動甲冑を身に纏い、従来型の歩兵とは、比較にならない戦闘力と機動力を手にしていた。
陸上兵器体系において、五〇トン級のMBT(米軍が二人乗り低視認ステルス戦車で50トン未満)が主力兵器である点に変化は無かったが、機動歩兵の戦闘力は無視出来るものではなかった。
各国の陸軍では、機動歩兵に対抗するため、対機動歩兵用戦闘車両及び支援兵器を開発していた。
AEやMA、ランドメイトなど、様々な名前があったが、人はそれを、ただ『アーマー』と呼んだ。
※ DEFCON 1(=Defense Condition 1) 一般的には戦争状態を意味する。
※1
レールガン:電磁加速砲とも。伝導体でできた弾体を二本のレールで挟み込んで電流を流し、ローレンツ力をつかって加速・射出する。
※2
サーマルガン;弾体そのものではなく、弾体の後方に発生させたプラズマを、電磁加速する事で弾体を射出する。
※3
ロケットアシスト砲弾:奮進式徹甲弾。弾頭に推進力をもたせた砲弾。大砲から発射するロケット弾のイメージ。
※4
最大砲戦距離はその倍以上となる。最大砲戦距離でも衛星等の情報を使って直接狙う事は可能だが、当然ながら公算射撃となる。因みに旧式のM1A2(約七〇トン)でも直接砲戦距離は四千メートル、最大射程はその倍以上あり、専用の榴弾の開発や射撃管制系の更新によって、米軍においても補助戦力としては生き残っている。
作品名:The Over The Paradise Peak... 作家名:海松房千尋