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雨の記憶

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「ロマンチストなのよ。ステキじゃない」
「だって、男だよ?」
「待って。ゲーム好きとか、ファンタジー物が好きとかじゃないの?」
「あー……」
 そういえば、絡んで出てくるのは“○○ファンタジー”とか、ゲームのタイトルがよく出てくる。でも……。
「でもさ。ゲームしてる感じじゃないんだよな……」
「クリスチャンとか?」
 信仰の問題……?
「……あり得る、かも……」
 授業中にボーッと外を見ている祐斗は、どことなく現実離れしているから。
「でも、いい子なんでしょ?」
 出来上がった食事を皿に移しながら、母が微笑む。
「うん。なんかね、楽なんだ、あいつと居るの」
 用意の出来た食器を運びながら、貴人は呟くのだった。
  
  ――――――――――――
『しばらくは、雨?』
 水分で重くなった雲を操りながら、一人が問い掛ける。
『うん。あと、一週間くらいかな……』
 同じ作業をしながら、問い掛けられた方が頷いた。
『面倒くさい国だよね。日本って……』
 雲に行き先を指図しながら溜息をつく。
 ここは“空の上”。二人は神に仕える天使なのだ。一言で“天使”と言っても色々ある。二人は下っ端の方で、言い渡された仕事は、“雨を降らせる事”。熱帯地域のスコールから各地の通り雨まで取り仕切るこの仕事、結構ハードである。それ故、二人一組の天使が世界中に担当地域を任されて点在していた。会話からも分かるように、二人の担当は“日本”。まだ新米なので、担当範囲が狭いのだ。
『去年までは、熱帯だったから、スコールくらいで楽だったのにな……』
 明るい茶髪の天使が口を尖らせる。
『ちょっとは昇格したって事なんじゃないの?』
 サラサラ髪の天使が笑いながら、行く先が分からずにウロウロしている雲に指示を出す。
『“梅雨”の後は“夕立”と“台風”? 雨ばっかじゃん!』
 どこからかキラキラと光る透明の玉を取り出した茶髪の天使が、それを空にかざした。
『落としたりするなよ、ヒーロ。大事な預り物なんだからな』
『分かってる!』
 玉は太陽の光を浴びて、ますます輝きを増してゆく。
『折角の“虹の雫”なのに、梅雨じゃ使えないんだもんなー……』
 雨の後には雲が消え太陽が顔を出す。そして、消えていく雨粒に反射して、虹が姿を現す。それを促すのが、雨の天使に授けられた“虹の雫”なのだ。
作品名:雨の記憶 作家名:竹本 緒