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夏 光一郎
夏 光一郎
novelistID. 14184
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ドンキホーテと風車

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このあとの行程は次ようになっている。白新線十六時発の電車て豊栄へ向かいそこで月岡温泉行きのシャトルバスに乗る。そうすれば暖かい温泉と美味しい料理が待っている。ドン・キホーテこと瀬川の胃袋がグーと鳴いた。寂しい駅を三つか四つ過ぎると終点の豊栄に着いた。「とよさか」と読ませる。

1600―JR白新線―1619JR豊栄(とよさと)1650―シャトルバス・民間バス会社ー1710月岡温泉広瀬館(泊)
 さてドン・キホーテは豊栄の駅前に降り立ち、シャトルバスをさがすことに相成った。ホームページには十六時三十分にシャトルバスが出るとなっていた。時計は十六時二十分を少し回っている。旅館名の入ったマイクロバスが見えなければならない。ドン・キホーテの脳裏にはまた嫌な予感が走った。携帯電話を取り出し旅館へ電話した。しかし要領を得ない。
「シャトルバスの位置はどこですか?見えないですが」
と聞くと、
「駅前に出たらタクシーの運転手か誰かに聞いてください」
という若い女の子の声。
タクシーの運転手に聞くと、
「そのへんですが」
とバスの停車場の方を指差す。そして、
「もう出たと思いますが」
と。また不安が募ってきた。いざとなればタクシーで行けばいいのだが。しかし、四、五十分かかるところだ。路銀にそうゆとりはないのだ。質実剛健を重んじるドン・キホーテとしては旅館がシャトルバスを出してくれるのならそれにこだわるのだ。十六時三十分に過ぎてもシャトルバスは現れない。再度旅館へ電話をかけた。単刀直入に、
「旅館のシャトルバスですよね」
と聞いた。答えは、何と、
「いえ、違います。路線バスです」
電話を切ると、大型のバスがやって来た。胴体には「シャトルバス」と書いてある。中に乗り込むと「直行便200円」と書てある。「路線バスを使っているのなら最初にそう言え!

「早とちりをしたお前がわるい」
という無言の声が聞こえてくる。稲を刈り取った広大な田園地帯を走り抜けてバスは月岡温泉へ着いた。気づかれしたドン・キホーテこと瀬川は風呂に入り、食事を済ませると、睡魔に襲われて、早々と夢の国へ。
 翌日再び新潟に出た瀬川は活動を開始した。タクシーでWINPRO本社へ着いた。

(18日)815タクシー豊栄854―JR?917新潟―タクシー―1000WINPRO1100―タクシー―新潟駅1150―上越新幹線―1400東京―文芸社―東京―新幹線―静岡―在来線―藤枝

〒950-0965
新潟市中央区新光町19-8パブリシティフレックスビル
025-284-2240

 あらかじめ送っておいた質問は次の通りだが。
○御社の風力発電事業の経営戦略上の位置付け
○マーケットの現状と課題
○小型風力発電の経済性(独立電源として導入する場合のメリット)
○海外展開の課題
○サプライチェーンの構造
 対応してくれた亀井隆平専務取締役はまず、低周波、騒音など大型風力発電の限界を指摘する。専務は三洋電機から移ってきた。最初風力発電はオランダの小型から始まり、また小型化へ歴史は繰り返すという。七年前に百%風力発電の会社を立ち上げ、試作策を繰り返し、二年半前から本格販売開始。
off-grid型で街路灯中心。行政、CSR、教育、看板が中心。8〜9割が海外販売。
○フランス、ビジー・セント・ジョージュ市の街路灯、3000台。フランスは田舎へ行くと真っ暗。まだ未決だがブラジルでオリンピック前のインフラ整備に数万台のオーダーとのこと。中国の天津、青島(チンタオ)、西安で数万台。上海では部品を作っているという。
 中国は百%国内会社出資なので、タイアップし数%のロイアリティをいただくという進出のようだ。これはドン・キホーテの判断だが、上海でポールを作っているということは、ここからヨーロッパへ輸出出来るので、その分メリットがあるのだろう。
 日本では屋上設置が有望だが、地下駐車場へ響いて来るという。未来につながるいろいろな試みをやっているので専務の話も明るく弾む。成長企業はいつも清々しい。アフリカではジェネレーター、カンボジアでは輸血用血液の冷蔵庫、照明用電源(2kwh)として期待がかかる。モザンビークでは教育が三交代なので、夜も授業がある。そこで夜の照明用電源が必要だ。これはODAの対象になる。携帯用電波の届かない地域の電波塔電源も有望だ。見せてもらった写真にはvodafoneの文字が見えるが、発電装置が携帯会社の違いに関わらす使えることは言うまでもない。これにはジーゼル発電を使っていたがコスト高に対応するものだ。電波塔電源のためにわざわざ電線を引くのは経済的でないから需要は大きいと考えられる。ハイブリッド発電だ。
 そのほか垂直軸を1メガワットへもって行くことも夢ではないようだ。発電機のコイルのある円盤とプロペラに直結した部分の円盤が逆方向に回転するので発電効率が格段に上がるようだ。
 フランス、ブラジルへは日本から輸出するが、上海でポールを作っているので、そこから出す。40ヤードのトラック専用コンテナで運ぶので大型風力発電機のように苦労しないですむ。羽に使う素材は元々ロシアの軍隊が使っていたものだが改良し特許を取った。軽さ、強度耐久性で優れていると言う。
「船もやるんでしょう」
と聞くと、社長が乗り気だと構造を身振り手振りで教えてくれた。垂直軸ハイブリッド発電機に出来ないことはないという勢いだ。
 海外情報は東京営業所に集まる。
「学会発表に使っていいか?」と聞くと、OK。
 軽い気持ちで取材に行ったのだが、スケールが大きすぎてついて行かない。オフレコだそうだが、ゼファー(他社)がやっている公的プロジェクトが上手くいかないので引き継いでくれないかと経済産業省から言ってきたが、うちはM&Aでないとダメと返事をしてあると言っていた。
「勉強して出直して来る」
と言うと、亀井さんは笑っていた。帰りのタクシーの中で運転手に聞かせてやると盛んに感心していた。
 日本には世界に冠たる電気機械・電子技術がある。先進国の都市部をはじめ、離島・島嶼・僻地、途上国の生活水準の向上のために同社の技術が役立つ時代が始まった。



ドン・キホーテ 淡路島へ渡る

 ドンキホーテの名を借りた瀬川は気を良くしてさらに旅を続ける。四年前から、風車を訪ねて日本全国を行脚し、その勢いでフランスのパリ、マルセイユ、韓国チェジュ島、台湾と悟りを求めての遍歴の騎士(武士)よろしく旅から旅のさんどがさ。旅空で自己を不遇の環境に置くことが唯一人間価値を高めるものと盲目的に信じだした。
今回は、「淡路島における風車建設と風車騒音問題に関する実態調査(旅程11/27日-29月)」という堅苦しい旅に出る。実は、南淡路にある大型風力発電所が騒音、低周波音被害で揺れており、実際にどれくらいの低周波が出ているかを測りに行こうとしたのだ。しかし、頼んでおいた低周波音測定器がなんと注文はしたもののなしのつぶて。いい加減な業者もあるものだ、品切れとも何とも言ってこない。それでまあ、仕方がないので今回は、来年度本格的な、測定調査をする予備調査となって、多少物見遊山になった次第だ。
作品名:ドンキホーテと風車 作家名:夏 光一郎