ドンキホーテと風車
「おお、慈悲深き神よ、思い姫よ、どうぞ罪深きドン・キホーテを許したまえ。
旅程は次のように立ててあった。公金を使っての旅ゆえ、申請した調査は正確に実行しなければならないのだ。
11月27日(土)名古屋―(新幹線自由席)―西明石・ビジネスホテル泊
28日(日)・ニッポンレンタカー―(たこフェリーにて淡路島へ渡る)―淡路IC・現地調査―福良−現地調査(南淡路ロイヤルホテル泊)
29日(月)―現地調査()・淡路IC―西明石―名古屋
http://hatosyogyo.web.infoseek.co.jp/public_html/cgi-bin/gotui/wind2/wind2.cgi (南淡路風力発電騒音問題)
しかしなんと、なんと……。
十一月二十七日
ニッポンレンタカーで車を借り、期待に胸をふくらませて、明石港へたどり着いた。何か様子がおかしい。大きなフェリーが岸壁に体を横たえてはいるが人っ子ひとりいない。なんと、「たこフェリー」は、十一月十六日を持って休止と張り紙が出ているではないか。結局、神戸・淡路・鳴門自動車道を渡って淡路島へ着いた。当然淡路島の発着場岩屋も寂しげな感じを受けた。沖に浮かぶあの瀬戸大橋にフェリーは負けたのだ。本物のドンキホーテならきっと、槍をかざして橋めがけて突進していくだろうが、瀬川にはその勇気はない。何せ寒い。十四メーターの北風が吹きすさんでいる。
そういうわけで、淡路島の西海岸へ出て県道をひたすら南へ走ることにした。
着いたのは、阪神淡路大震災記念公園。三菱重工業風車(1基)が立っているが、なぜだか故障により停止中。どういうわけか全国の三菱風車はよく止まっている。新潟県上越市うみてらす名立の風車もそうだった。
記念公園には野島活断層のずれた跡が保存され必見である。長さ約百メートル、幅二十メートルで屋内に格納され保存されている。記念公園は、十五年前の惨事を思い出す様々な工夫が凝らしてある。中国からと思われる使節団一行が神戸市の担当者からの話を熱心に聞いていた。同じく中国からの観光客一行も。日曜日なので大型バスが五台ほど来ていた。
西海岸をさらに南下すると五色町に入る。浄化センターに隣接してクリーンエネルギー五色の大型風車が立っている。
研究熱心なドン・キホーテは早速ノートを取り出し、パネルから必要な情報を写し取る。
「株式会社クリーンエネルギー五色は、五色町が出費する第三セクター会社として平成十三年九月に設立された。NEDO補助事業。五色町は北の大地を開拓した江戸時代の豪商、高田屋嘉兵衛の生誕地、彼は風を受けて海運業で活躍した。今、同じ風を活用したこの風車は、環境共生の町「五色町」のランドマークとして地球環境に貢献しています。(風力発電所パネルより)マシンはTackeの1500kW」
風速十二メータで勢いよく回転していた。私が写真を取っている間も、男性の二人連れと夫婦子供二人の家族連れがきて、盛んに感心しては写真を撮っていた。タワーの隣にはブレードが三枚置かれており、いかに巨大設備であるか実感させられる。
淡路島の南端、南あわじ市は福良(ふくら)まで来ると風が幾分穏やかになった。山が季節風を遮っているのだろう。福良の港へ来ると、やはりうず潮見学がしたくなった。帆船が二隻遊覧客を待っているが、本日の渦潮の発生は期待できない、という表示になっている。瀬戸内海の潮流を利用した潮力発電が検討されているので、ドンキホーテは渦潮の中に突っ込んでも見学する気でやってきた。しかしながら、たこフェリーの休業といい、やはり今回はついてない。というわけで、車を本来の目的地である大型風力発電基地へと向かわせた。なんと、風力発電所の至近距離に住宅(別荘地)があるではないか。
手前には漁港の古い町並がある。落ち着いた、いい感じのする漁港だ。風は冬は、私の位置の向こうから手前にかけて吹くから、集落は風下に当たり、騒音と高周波音が聞こえると思われる。別荘の進入口には一般車両進入禁止とある。警戒物々しい感じを受ける。数を数えると十五基ある。同発電所を見学した人が、ホームページに次のようなブログを載せている。
「南あわじ市阿那賀(あなが)西路地区で国内最大規模の風力発電施設が建設されました。出力二五〇〇kW級の大型風車が十五基立ち並び、その景観は雄大で圧倒されます。建設当時は、夜中に一日四回大きな支柱などを運搬していました。狭い街中の道路を華麗なテクニックで上手に運搬する様は、夜中にもかかわらず見物人が出た程でした。」
http://www.mapple.net/spots/S0000001642.htm
今回のメインはこの風力発電所で、来年度は実際に低周波音の測定を試みる。「風力発電施設を見学される方は『晴海ケ丘』敷地内への立ち入りを固く禁止します。CEF南淡路ウインドファーム株」とある。何ヶ所かの測定地点を考えてみた。
その日は、「ホテルニューアワジ・プラザ淡路島」へ投宿した。ドン・キホーテは遍歴の旅の行く先々の旅籠で、それを城と間違えたそうだが、瀬川の目にも「超豪華ホテル」と映った。その夜は、コンビニで買った食料をつまみにして、少々のアルコールを頂いて、ドン・キホーテこと瀬川は大きなベッドで安らかな眠りに就いた。
十一月二十九日(月)
「ホテルニューアワジ・プラザ淡路島」でも風力発電機を持っている。二〇〇〇kW 一基。この超豪華ホテルが所有する風力発電も、そのうち槍を片手に攻め立てねばなるまい…ドンキホーテは風車を見上げた。
さて日程の最後は、淡路島北部の大型風力発電所計画地だ。ナビ付きのスマートな馬にまたがったドンキホーテは颯爽と計画地へ向かう。途中道の駅で、たこの丸焼きを食ったがこれがまたおいしかったこと。
関西電力によると兵庫県淡路市北部の丘陵地帯への発電所建設計画は次のようになっている。(抜粋)
「兵庫県淡路市における風力発電事業について
当社グループは、このたび、当社グループ会社の関電エネルギー開発株式会社が、兵庫県淡路市北部において、当社グループとして初の風力発電事業を実施することとなりました。 当社グループでは、兵庫県淡路市北部については、平成十五年一月に調査を開始し、事業性が見込まれたことから、平成十八年二月から環境影響評価を実施してきましたが、このたび、兵庫県の「環境影響評価に関する条例」に基づき、環境影響評価書を兵庫県に提出しました。これを踏まえ、正式に本事業に着手することとしたものです。
本事業は、兵庫県淡路市北部の丘陵地帯に定格出力二万四千kWの風力発電所(二千kWの風力発電設備十二基)を建設するもので、発電電力量は年間約四千万kWh(一般家庭約一万世帯の年間電気使用量に相当)、CO2排出削減量は年間約一万四千トン(面積約二千haの森林が1年間に吸収するCO2量に相当)となる見込みです。今後、本年(二〇一〇年)六月に建設を開始し、平成二十二年十二月に運転を開始する予定です。
別紙:淡路北部風力発電事業(仮称)の概要
http://www.kepco.co.jp/pressre/2009/0130-4j.html