樹竜の旅
「ありがとうございます…、竜神様。」
嬉しそうにキズナはぺこりと頭を下げた。不安を完全にぬぐい去れないようであったが、
それでもどことなく安堵したようなそんな様子だった。
「ホッとしたところで一つ聞きたいことがあるけれど、いいかな?」
「はい…?何でしょう…?」
「ハラヘッタけれど…ご飯どうにかならないかな?さっきのどさくさで、会食がお預けに
なっちゃったから、夕飯まだ食べていないんだ。携帯食料は全部クリオの鞄の中だったし。」
「あっ、私のせいで…ゴメンナサイ…。」
「気にしなくていいよ。あんな連中が居る中じゃ食べたって気がしないもの。キズナはお
腹は減っていないのかい?」
「私は…いつもお腹が空いているか居ないか分からないですから…。」
俯いて答えるキズナの言葉を聞いて、俺はピンッと閃いた。これがあればきっと元気にな
ってくれるだろう。
俺はベットのに置いてあった鞄から、ノート位の大きさのあるケースを取り出した。
「竜神…様?…一体何を…?」
不思議そうに種が入ったケースを覗き込むキズナの耳の毛を撫でると、俺は端の留め金を
外し、広げて見せた。中に隙間なく敷き詰められていたのは、形も大きさもバラバラな雑
多な種だ。
「とりあえず、食事を作るのを手伝ってくれるかな?」