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リュリュー
リュリュー
novelistID. 15928
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樹竜の旅

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(ガンッ!!!!)

不意に直ぐ脇から、硬い何かが当たって跳ね返るの音が聞こえてきた。最初は散発的に、
それが徐々に連続して聞こえてくる。

「なんだ?」

俺は驚いて振り向いた。国王の仕業と思ったが、国王も状況が飲み込めないらしく座り込
んだままバルコニーの外を凝視していた。

「これは一体どこから…まさか!?」

ハッとなって広場の方をみると、広場に居た群衆がバルコニーに向かって石を投げつけて
いたのだった。耳を澄ますと、群衆の信じられない声が俺の耳に聞こえてきた。

「もう国王なんて信用ならねぇ!」

「竜も金も全部俺のモノだ!」

「革命だ!」「そんなもの居るか、俺が皇帝だ!」

「竜を俺に!」「俺に!」「「「「俺に!!!!!!!!!!!!!!!」」」」

「…しまった!!」

ギラギラとした表情で口々に話す群衆を見て、俺は愕然となった。よくよく見ると広場の
あちこちで殴り合いや暴動が起き始めている。その時、ふと初日の会談後にクリオが語っ
た言葉が俺の脳裏をよぎった

(こうなったのもやっぱりみ〜んなあの国王が悪いのかな?)

「クリオ、この国をこんなにしてしまったのは国王じゃない、この国の獣全てだったんだ
よ。クッ…!」

迂闊だった。このままでは革命なんて起こらない。それどころか政府が消滅して酷い内乱
が起こるだろう。
 怒号が沸き上がるように聞こえ、バルコニーには更に投石が投げ込まれた。

俺にも石が当たりそうになるが、群衆達はそんなことはお構いなし。周囲では先程までい
たボディーガード達はとっくに逃げ出し、取り残された国王が柱の隅で長い耳を伏せて小
さく震えていた。最早、この国王に期待できることは何もなかった。

「お願い…みんなやめて!!」

キズナが横倒しになったマイクに向かって泣き声で叫んだが、怒号であっという間にかき
消された。

「失せろ!テメェそこの竜を独り占めして好き放題しようとしているんだろ!?」

「あのガキだ!あのガキを叩き出せ!!」

{いいや、イケニエにしてしまえ!竜は俺達の一族のものだ!」

群衆の返事は無慈悲なものだった。もう、ココの国の人はここまで心を貧しくなってして
しまっていたのか…。それでもキズナが何か言おうとして身を乗り出したその時、嫌な悪
寒が背筋を走った。

「…!!キズナ!危ない!」

俺は素早くキズナを手元に抱き寄せた。その瞬間、速球で飛んできたブロックの破片が、
キズナのすぐ目の前を通り過ぎ、外壁に当たり砕け散った。群衆達が近くまで押し寄せ、
一部の獣が高速で重い破片を投げつけてきたのだ。

「キズナ、大丈夫か?」

「うん私は大丈夫、…アッ。」

ハッとして下を見ると、石の破片に混ざり、キズナがいつも大事に抱えていた竜の像が床
に転がっているのに気が付いた。キズナが慌てて拾いあげようとしたその時、

「!!…割れてる…!!」

キズナの竜の像は台座の部分が粉々になり、コンクリートの破片と最早見分けがつかなく
なっていた。先程飛んできた石のの一部がきっと像にあたったのだろう。キズナが必死に
守った像がこうなるなんて…。そう思うと、俺には怒りの感情が沸々とわき上がってくる
のを覚えた。

「いいかげんにしろ、こん畜生ども!!!!!!!!」

これほど腹が立ったことはかつてなかった。畜生って言葉は比喩なんかじゃない、本当に
こん畜生だここの連中は!!

「ここまで腐りきっているのなら、もう生きてる必要なんかないっ!!俺が滅ぼしてやる
から覚悟しやがれ、ゴミ虫野郎ども!!!!!!!!!」

 毛に埋もれていた爪と牙を剥き出しにした俺の様子に、先頭を走っていた群衆の何人か
が立ち止まった。けれども迫り来る群衆の流れは変わらなかった。でも、怒りに燃える今
の俺にそんなことは関係なかった。

 もう悪竜と呼ばれてもいい、竜神でなくてもいい。この爪と牙で片っ端から…そう覚悟
を決めたその時だった。

「だめ!!!」

突然、彼女が耳元で叫ぶと、そのまま俺の首っ玉にしがみついてきた。戸惑う俺の目に彼
女の濃い瞳が映った。

「竜神様やめて!!この国が滅ぶのは私は嫌!!大好きな竜神様が悪竜になるのはもっと
嫌!!それよりも、竜神様と一緒に幸せになりたい!!!!!!お願い、私の願いを聞き
入れて!!気持ちが収まらないなら…こうするっ!!」

(チュッ!!!!!!)

キズナそう叫んだ瞬間、柔らかい毛の感触が口に伝わってきた。キズナが俺に抱きつき、
そのまま唇を重ねキスをしてきたのだった。

もう俺の腹は決まった。悪竜になるのはやめた、そして彼女に心底惚れた!!

「キズナ…耳を寝かせて思いっきり僕の身体にしがみつけ…!!」

俺は早口でそう答えると、スッと息を一気に吸い込んだ。全部吸い込んだところでグッと
喉に力を入れ…。

(GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR
RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!)

俺は思い切り吠えまくった。その瞬間、爆発のような震動が周囲の空気に響き渡る。咆吼
は周囲にあったモノは吹き飛び、直ぐ近くまで押し寄せていた群衆をなぎ倒した。


作品名:樹竜の旅 作家名:リュリュー