プライベート・ライアン
あんな忌々しい島でよ。
埋めてもやれずに、なにも持ち帰ってもやれずに。
あいつらにさ。悪いコトしてしまったからな。
オレは毎年、あいつら探しに行ったんだ。
ビっこ引きながらよ。
骨になっちまってよ。みーんな、骨になっちまってよ。
野ざらしのまんま、骨になっちまってもよ。
会えて嬉しかった。
みんなで帰ろうよって。内地へヨ。
郷に帰ろうよって。
骨のひとつひとつ、抱きしめてよ。
長いこと待たせたなぁってなー。
思えばヨ、たった4-5 年の戦争だったのにな。
あいつら探すのに毎年、毎年、20 年もかかった。
まだ探し足らないかもしれないが、
オレも、もう動けなくなっちまった。
文字通り、足手まといだよ。
オレたちはヨ、戦ったよ。御国の為にな。
たまたま負けたらしいが。
誰が決めたんだ?オレは信じないね。
だってオレたちが、必死に戦ったんだからよ。
絶対負けちゃぁいないぜ。
あいつらは死んでも戦い抜いたぞ。
オレはもう死んでたんだよ。
たまたま体がまだ動いたんだ。
ビっこ引いたままだがよ、落とし前つけにゃあ。
くたばれるかい。
あいつらが皆、国によ、帰ってくれればいいんだがなぁ。
なんか宮司と私と涙目になっちまって。
「爺ちゃん、ここに居たのか?!」って。息子が迎えに来た。
息子っていっても70 近い爺さんだが。
「こんなところで。また戦争のハナシしてたのかぃ?」
作品名:プライベート・ライアン 作家名:平岩隆