プライベート・ライアン
だって応援に来る途中でやられちまったからさぁ。
撤退する間に酷いもん見ちまってさ。全滅だよ、全滅。
オレもビっこ引いてたしさぁ~。
埋めてやることも出来ずに。
あんな島でよ。
悪いコトしたってよ、今でも思ってんだぁ。
あんな忌々しい島でよ。
埋めてもやれずに、なにも持ち帰ってもやれずに。
あいつ等オレたちを助けに来たんだよ。
なのによ。オレが無様に生きていてさ。
助けに来てくれたあいつらが、あぁなっちまってよ。
だって、あいつら呼んだの、オレたちだぜ。
マニラの病院に入院して。
台湾まで帰ってきたんだけどよ。
内地に戻れなかったな。わかるか?
馬鹿だとかいわれたけど、マニラに戻ってよ。
だってよ。黙って帰れるかよ。いいか?
オレはもう死んでたんだよ。
たまたま体がまだ動いたんだ。
ビっこ引いたままだがよ、落とし前つけにゃあ。
帰れるかよ、内地へ。
死ぬことも出来ねえよ。
今度は巧くやった。やつら、やっつけてやった。
そこでオレは終わったのよ。
オレはヨ、戦ったよ。御国の為にな。
その後、一生、ビっこ引くことになったがよ。
後悔なんかしちゃぁいねえぜ。
本当だ。
全く後悔なんかしちゃいねえ。
タカ派とかよ、好戦的だとか抜かすやつぁいるが
あんなヘナチョコな奴ら、どうしょうもないぜ。
お国をヨ、どう思ってやがるんだ。まったく。
長老、一気に捲し立て、ここでようやく茶を飲む。
あぁ一息ついて。
いきなりよう、肩口から斜めに、こう、撃たれたんだぁ!
また同じハナシがはじまった。
作品名:プライベート・ライアン 作家名:平岩隆