プライベート・ライアン
おう、そりゃぁ、オマエ、すげえぞ。
いきなりよう、肩口から斜めに、こう、撃たれたんだぁ!
痛てぇのなんの。でも痛いって感じじゃないんだ。
むしろ熱ちぃ!って感じだな。
そんときは。
そしたらよ、背後からコッチの肩撃ち抜かれてよ。
そのときが初めてだな、痛てぇ!って感じたのは。
次に足元をかすめた跳弾が右足の裏に当たってよォ。
そりゃぁ、立ってらんないよ。転げまわったな。
もうよぉ、目の前が赤いんだよな。
チカチカしてよ。なんだろうな、腹筋が攣っちまってよ。
呻くことも出来ねえんだよ。
けどよ。そこに寝てるわけにもいかないんだよな。
だって跳弾だぜ、そこらにパンパン撥ねてやがるんだからよ。
やっとのことで堀に入って、タマをかわしてたんだがよ。
頭の上でタマが跳ねてるのがわかるんだよ。
たまらないぜ。生きた心地なんかねぇもん。
息も絶え絶えって云うじゃないかぁ。
息を吸うんだけどさぁ、
肺に穴が開いてたのかなぁ、どこかで漏れてやがるんだ。
苦しいよ。
どうも太平洋戦争の頃の話で。
まわりはよ、やっぱり皆、どこか脚を撃たれてんだよな。
奴ら、脚を狙ってたんじゃないのかねぇ。
そうすりゃぁ、逃げられないもんな。
誰が時計持ってたか知らないけど、
終わってみりゃぁ14-5 時間そんな状態でさぁ。
よく守ったよ。あんな盆地でよ。
半分やられてたな。埋めてやったよ。
応援呼んでもさ。
来ないんだよ。
作品名:プライベート・ライアン 作家名:平岩隆