隠れ森のニジイロトカゲ
そんな時ミゾーは、ポケットからあのとき交換した、クリスタルバニーのしっぽを眺めては、独り言のようにこう繰り返すのです。
ボクは陽気なニジイロトカゲ。
光を受けて虹色キラキラ、輝くカラダが自慢だよ。
長いシッポもお気に入り。
どこで切られてしまっても、いつでもすぐに元通り。
決して嘆いたりしないんだ。
ある時ひとりの少女に会った。
暗く湿った森の中、少女もキラキラ輝いていた。
だけど、なぜだか少女は泣いていた。
何がそんなに悲しくて、何を思って泣くのかなぁ?
そんな綺麗なカラダを持って、嘆くことなどないだろうに。
ボクは寂しいニジイロトカゲ。
光を受けて虹色キラキラ、輝くカラダが自慢だよ
だからキミにもあげましょね、ボクの虹色キラキラ輝くシッポ。
代わりにボクにもくださいな、キミの素敵なキラキラ輝くそのシッポ。
いつのことかはもう忘れたけれど、いろんなことを話したよね。
そうして交換ふたりのシッポ。
キミのシッポは生えただろうか?ボクのシッポはもう元通り。
もう一度キミに会いたくて、今でも大切に持っているんだ。
キミの透けて輝くガラスのシッポ。
ボクは憂鬱なニジイロトカゲ。
光を受けて虹色キラキラ、輝くカラダが自慢だったよ。
だけど日増しに干涸びて、だんだん虹色キラキラしなくなった。
以前のように輝くボクに戻りたい。
元気にキラキラ輝くキミに会いたいよ。
この頃から、ニジイロトカゲのミゾーのカラダが、徐々に輝かなくなる日が増えていました。
そうです。それはミゾーのニジイロトカゲとしての命に、終わりが近付いていることの知らせだったのです。
作品名:隠れ森のニジイロトカゲ 作家名:天野久遠