そのままの君で
「光ー!ご飯だよ」
リビングから呼ばれて、家族にはこんなみっともない姿見せてたまるかと気合を入れてから部屋を出た。
夕飯を食べ、風呂に入り、歯も磨き。
もう寝るから、といって部屋にこもったのはまだ22時過ぎだった。
放り投げた携帯電話を見ても、相変わらずなんの受信もしていない。
「・・・はぁ」
このくらいの時間なら、電話をしても許されるかな。
性懲りもなくそんなことを考えるくらいには、幸太郎中毒だった。
さっき、別れることを考えてたばっかりなのに。
別れることを考えながらも、頭のどこかではまだ幸太郎と付き合っていける道を探していた。
結局、悩んだ末に幸太郎の携帯に電話をかけた。
これで電話にでなかったら、本当に別れてやる。
そんなことが本当にできるのかはとりあえず別にして、繰り返されるコール音を聞いた。
『ただいま、電話に出ることが出来ません』
数回のコール音の後、留守番電話に切り替わる。
こんな時間なのに、電話に出られないってどういうことだよ・・・!
むしゃくしゃして、電話の電源を切ってベッドにはいったけれども当然眠れるはずがなかった。
もしかして、誰かと一緒にいるのかも。
そんな不安が頭を離れない。
まさか、あの学級委員・・・?
放課後の自販機前での二人の様子を思い出す。
光と幸太郎が付き合っている、というよりも、あの学級委員と幸太郎が付き合ってるというほうがよほど信憑性のある光景だった。
「まさか、な・・」
幸太郎にかぎって二股などということはないとおもうが・・・あの学級委員に惑わされたりしていたら、どうしよう。
ふとそんな考えが頭をよぎる。
うっかり部屋に連れ込まれたりしてたら。
いや、でもあんな普通顔の奴に誘惑されたりしてもぐっとこないだろうっていうか。
あーでも普通顔だから、うっかり手をだせちゃったりも・・・?
そこまで考えて、我に返った。
「・・・んなわけ、ないよな」
うっかり学級委員と幸太郎で妄想してしまったけれど、あいつは、もし俺を抱くことになったとき、どういうしぐさをするんだろう。
たぶんあの長い指がボタンを外して、柔らかい唇でいろんなところにキスして・・・。
想像は頭のなかで膨らむだけでなく、光の体にも反応を促した。
綺麗な指が自分のモノをつかみ、イかせようと触るのを想像しながら、自分の手を動かした。
「・・・っはぁ」
自分の手の中に液を吐き出して、ティッシュ箱を引き寄せる。
「・・・あーもう。あいつで抜くとか、最悪・・・」
でも、想像した幸太郎の姿が、今頃誰か他の奴のものだったりしたら・・・。
携帯電話の電源をつけて寝なおしたけれども、眠れるわけもなかった。
そして、携帯電話は光らなかった。
作品名:そのままの君で 作家名:律姫 -ritsuki-